──魂の記憶を映し出す「中陰の記録装置」として──
紫微斗数において、右弼星(うひつせい)はしばしば「補佐の星」「サポート役」として紹介されます。
左輔星(さほせい)と対を成し、紫微帝星を補佐する忠義の星。優しく人懐っこく、協調性に富み、まるで家庭や職場を陰で支える“内助の功”のような存在です。
しかし、欽天四化紫微斗数の視点から見ると、この右弼星には、もう一つの深遠な顔があります。
それは、「魂の記憶装置」としての役割──すなわち、中陰期に魂が蓄えた“情報”を保存する《ブラックボックス(黒盒子)》としての象徴です。
中陰期とは?──転生を選ぶ魂の設計室
私たちは肉体を離れると、すぐに次の生に向かうわけではありません。仏教や道教では「中陰期(ちゅういんき)」と呼ばれる霊的な中間期間が存在すると説かれています。この期間、魂は幽界にとどまり、自らの行いや執着、智慧と向き合いながら「次の人生をどう生きるか」を選択するのです。
どの親のもとに生まれ、どんな性別で、どんな人生を歩むのか――。この設計が練られる期間こそが「中陰期」であり、そのとき魂が携えて地上に持ち込む “テーマ” や “記憶” こそが、命盤に投影されているというのが、欽天門の大いなる見解なのです。
右弼星=中陰星=記憶装置
このとき、右弼星は単なる「補佐の星」ではありません。中陰期における魂の「選択」と「記憶」を記録する “潜在意識の中枢”、つまり「中陰星」として機能すると捉えます。
私たちが人生の中で、なぜか惹かれる人や出来事、説明のつかない恐れや執着、あるいは不思議な既視感を感じるとき――それは、右弼星が携えてきた “魂の記憶” が反応しているのかもしれません。
性別決定と右弼の感応力
興味深いことに、欽天門では「魂が中陰期にどちらの親に執着したかで性別が決まる」と考えます。父親(男)に欲望や憧れを感じれば、魂は女性として胎児に宿り、母親(女)に対してなら男性として胎児に宿る。
もう少し詳しく言えば、「中陰星(中陰身)」が入胎(受胎)の機会を観測する際に、自らの欲望や執着がどちらの親(父または母)に向くかによって、来世の性別が決定されるという考え方です。
この “感応” のプロセスにおいても、右弼星の象徴する「感受性」や「記憶力」が大きく関わっているのです。まさに、右弼星は肉体を離れた魂が世界を観察する“霊的レンズ”でもあるのです。
命盤は中陰期のブループリント
欽天四化紫微斗数では、命盤は「中陰期に魂が選んだ人生設計図」として読み解かれます。
- 来因宮は、「魂がなぜこの人生を選んだのか」という来歴を語り、
- 右弼星は、「魂が記憶して持ち越してきた情報体」であり、
- 文曲星は、「果報を選ぶ力(取捨選択)の鍵」、
- 自化星は、「未解決の課題が今生で再演されるテーマ」、
- 己宮・壬宮は、「前世の因果と今生の意味」を照らします。
このように、命盤は単なる人生の運勢表ではなく、魂が中陰期に下した “選択” の痕跡を映し出す立体地図なのです。
右弼星と向き合うということ
命盤に右弼星があるとき、それは「あなたがどんな “魂の記憶” を持って生まれてきたのか」を示す重要な手がかりです。それは、現世においてただ補佐役に徹するという単純な意味ではなく、過去世から今生にかけて、あなたの魂が何を大切にし、何を課題として持ってきたのかを語りかけてくれているのです。
右弼星は、魂が前世から持ち越した大切な記録帳。その記録をたどれば、「なぜ自分がこの人生を選んだのか」その答えが、命盤の奥底から浮かび上がってくるのです。

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